タイ王国海軍参謀長タナラット・ウボン海軍大将との懇談
2015.02.28
2月10日(火)1415~1445の間、グランドヒル市ヶ谷「琴」の間において、来日中のタイ王国海軍参謀長 タナラット・ウボン海軍大将と永岩同窓会長、赤星同窓会副会長が懇談した。タナラット海軍大将は、防大23期生であり、この度防大同窓会タイ王国支部長に就任されたばかりである。
永岩会長
先ず、防大同窓生2万4千人を代表して、「おかえりなさい」と言わせて下さい。
大将は、日本に来られる前に、韓国及び中国を歴訪されたと伺いましたが、お疲れではありませんか?また、久しぶりに日本に来られた印象は如何ですか?
タ大将
疲れはありません。また、日本は、あまり変わっていないという印象です。
永岩会長
大将は防衛研究所にもおられたと伺いましたが。
タ大将
防研一般課程の第45期です。
永岩会長
私が(退職前の)最後の配置である航空支援集団司令官の時、今からちょうど10年程前になりますが、イラクの復興支援任務でタイのウタパオ海軍基地に立ち寄った時に、防大同窓生が集まってパーティーを催してくれたことを覚えています。また、スマトラ島沖地震の際には、ウタパオをベースにしてインドネシアのバンダ・アチェに部隊を派遣しましたが、その時にも(タイには)お世話になりました。タ大将が第2艦隊司令官か海軍本部の総務部長の頃でしょうか?
タ大将
そうですね。ちょうどその頃ですね。
永岩会長
明後日(2月12日)の大将の防大での記念講演は、私と永田副会長も聴講させていただきます。
タ大将
講演といっても、日本語も忘れていますし、大したお話はできません。
赤星副会長
いやいや、タイ王国の海軍大将の講演が聴けるというだけで、学生にとっては大変ありがたいことだと思います。
永岩会長
本日は、お忙しいスケジュールの中、時間の許す限り色々なお話を伺いたいと思います。私からはまず、大将がこの度タイの防大同窓会支部長におなりになったということで、タイにおける同窓会の活動状況についてお聞きしたいと思います。
大将が、アセアン(東南アジア諸国連合)における防大同窓生ネットワークの構築を提唱されていることは大変素晴らしいことだと思います。安倍総理が唱えている「積極的平和主義」に基づき、日本が南シナ海周辺の安定に積極的に貢献しようとしている時に、防大OBが関係国の国軍の高位高官の地位にあるということは極めて大事なことであると考えます。
日本以外では、タイが防大同窓生が一番多いと聞いていますが。
タ大将
そうですね。現在は確か陸海空合わせて180名程いると思います。
永岩会長
タナラット大将のような高官が支部長になられたことを切っ掛けに、他の国や地域でも防大同窓会の活動が活発になればありがたいと考えます。
赤星副会長
タイの同窓会としては、何か定期的な活動をしておられるのでしょうか?
タ大将
年に何度か同窓生を集めたパーティーを行っています。また例えば、新年会等以外でも、防大校長がタイを訪問された時や練習艦隊が寄港した時なども、同窓生を集めて歓迎会を開いたりしています。私自身、支部長として今後そのような機会を増やしていきたいと考えています。
永岩会長
今回の大将の支部長就任に際しては、同窓会長としてタイを訪問しお祝いしたかったのですが残念ながら叶いませんでした。私の会長としての任期は今年の3月までですが、新しい会長が貴国を訪問する機会もあるかもしれませんので、その際は宜しくお願いいたします。
タ大将
もちろん大歓迎いたします。ところで、他の国、例えばシンガポールにおける同窓会の状況は如何でしょうか?
永岩会長
シンガポールについては、残念ながら情報が余りありません。同窓会としては、現在はまず国内の同窓会組織の拡充に力を入れているところですが、当然海外も視野に入れていますので、今後は海外の同窓生とも具体的な情報交換を密にしていきたいと考えておりますので、宜しくお願いいたします。
赤星副会長
東南アジアにおいて防大同窓生のネットワーク拡充を図るとすれば、やはり留学生の数が多いタイが中心となると思います。
永岩会長
東南アジアと南シナ海の安定は日本にとっても大きな関心事です。
特に中国の活動が活発化しています。大将は今回の訪日前に中国も訪問されたと聞いていますが、どちらに行かれたのでしょうか?
タ大将
中国は元気ですね。特に、世代交代が進んでいて、若者が元気です
今回の中国訪問では、北京、姜哥庄(ジャングウジャン)、青島、安慶、武漢、上海など見せてもらいましたよ。今回の訪中は、タイの海軍司令官の公式訪問に同行したもので、私が先に中国に入り施設研修等をした後、後から中国に来た司令官に私も途中で合流しました。
永岩会長
日本の場合は幕僚長が自衛隊のトップですが、タイには参謀長の上に司令官がおられるということですか。
タ大将
その通りです。
赤星副会長
タイ王国海軍は中国海軍とは、今までも緊密に交流してきたということでしょうか?
タ大将
それほどでもありません。20年ほど前までは、中国製の艦艇を6隻ほど購入した実績もありましたが、最近では、ヨーロッパやアメリカの装備の方が性能も良く信頼性も高いということもあり、中国との関係も疎遠になっています。
赤星副会長
大将は、防大卒業の後、江田島の幹部候補生学校には行かれたのですか?
タ大将
はい、行きました。遠洋航海にも行きましたよ。
赤星副会長
私は、大将が江田島を卒業された2~3年後に候補生学校の教官をやりましたが、その時もタイの留学生がいました。名前は忘れてしまいましたが、色の黒い非常にまじめな海軍士官だったと記憶しています。
タ大将
色が黒い・・・多分、ルンビタック君でしょう。25期生ですね。彼は、早い時期に海軍を退役して、今は水先案内人をやっています。
赤星副会長
そうですか。大変まじめな好青年で、彼の言動には、いつも感心してました。
永岩会長
同窓会としても、今後2~3年かけて東南アジアにおける防大同窓会ネットワークを如何にして拡充していくかを議論していきたいと考えていますので、大将にも是非議論に加わっていただき、アイデアを頂戴したいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。
タ大将
私も、防大同窓生としての利点として、仕事がやり易いという実感があります。例えばシンガポール等に出張しても、必ず防大同窓生が対応してくれます。もちろん、ベトナム等、留学生を送り始めて間もない国もありますので、ネットワーク構築には時間も必要です。
赤星副会長
ベトナム海軍とは交流があるのですか?
タ大将
あります。海軍の共同パトロールもやっていますし、毎年NAVY to NAVY Talksも行っています。
永岩会長
今では自衛隊もベトナムとの交流が活発になってきています。海上捜索や事故調査に関するスタディ等において自衛隊の知見をベトナムに提供する為に、去年も何度か交流がありました。自衛隊としても各国と交流を活発に行う時代になってきており、これを促進することが地域の安定にもつながるものと思います。
赤星副会長
ベトナムは、防大にも優秀な学生を毎年送り込んでいます。
タイにとってベトナムは国境を接している国でもありますので、良好な関係を維持することは大切なことだと思います。
話はかわりますが、タイには海上自衛隊の練習艦隊が数年に1度は寄港して、大変お世話になっています。
タ大将
来月も部内課程の外洋練習航海部隊が寄港しますね。
赤星副会長
大将の同期も、海上自衛隊の現役は武居海幕長だけになりました。あとの方々は皆、第2の人生を送っています。
タ大将
そうですね。今日の午前中の企業研修でも、同期生に会うことができました。また、今夜も海上4班の班会を同期が開いてくれることになっています。海幕長も同じ4班だったので参加してくれます。全部で10名くらい集まってくれるそうで、大変楽しみにしています。
永岩会長
この後もご予定があるということで、そろそろお開きにさせていただきたいと思います。明後日(2月12日)には、横須賀で防大と共催で歓迎会を開かせていただきますので、是非色々とお聞かせ下さい。本日は、誠にありがとうございました。
(本部事務局事業部担当記)