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会長ルーム・活動録

防衛大学校訪問・懇談等(その4)

2014.09.01

(総合情報図書館長 武田康裕先生と共に{総合情報図書館の研修})2014.7.25

 総合情報図書館長の武田康裕先生は、総合情報図書館の管理運営を主導する館長職のみならず、国際関係学科の教授としてアジアの安全保障に係る教鞭をとり、また、研究者として現代アジアが抱える各種課題と対策について研究・研鑽を続けている。永岩会長とは防大同窓会に係る関係と併せ、中国の覇権拡大に伴うアジア安全保障のリサーチャーとして交流があり、突然の訪問であったのにかかわらず、多忙なスケジュールをさいて総合情報図書館を案内していただいた。

1 総合情報図書館の歴史
 防大における図書館の歴史は195DSC_1407-1.jpg2年(昭和27年)8月に保安大学校教務部内に図書課が発足したことから始まり、3年後の昭和30年に初代図書館が竣工し、以来何度かの改築・増築を経て、50年目にあたる2002年に防大50周年記念事業の一環として図書館が建設された。そして、2009年より図書館と学術情報センターが統合され総合情報図書館として現在に至っている。現在、蔵書数約60万冊、収蔵能力70万冊、約450席からなる閲覧室を備えており、名実ともに防大の教育・研究を支える中枢となっている。

2 案内していただいた総合情報図書館
(1)展示コーナー
 丁度、図書館内において本年DSC_1384-1.jpgが第1次世界大戦100年目にあたるため、防大所蔵の大戦関連図書・遺墨を展示していた。当時、青島にてドイツ軍に勝利した日本軍は、戦利品や膨大な資料を持ち帰り、その中には約27,380冊の書籍も含まれていた。本展示では、陸軍士官学校を経由して防大に移管されたこれらの図書が展示されていた。

(2)主要な図書館のコレクション
① 戦略・戦術等の古典稀覯本
 18世紀に西欧においてオーストリア継承戦争、7年戦争に勝利し強国プロシアの礎を築いたフレデリック大王の戦術・戦略を記したフレデリック大王全集(全33巻)や紀元前4、5世紀のギリシャの将軍で歴史家、哲学者としても有名なクセノフォンの全集(1555年刊行の羊皮革)等、世界的にも価値の高い稀覯本が収蔵されていた。
② 遺墨(掛け軸)                      
 圧巻であったのは、貴重書庫におDSC_1396-1.jpgいて収蔵される掛け軸であった。昭和31~45年にかけて取得した遺墨は、旧陸海軍軍人、文人墨客、幕末から明治にかけて活躍した人々の書が中心で、吉田松陰書幅(夏目漱石旧蔵)はじめ、勝海舟、山岡鉄舟、桂太郎、東郷平八郎、大山巌、児玉源太郎、乃木希典ほか90本が保存されている。
 永岩会長が「私の故郷、鹿児島の大先達である西郷南洲先生の書はありませんか」と伺うと「はい、はい、有りますよ」とばかり書棚から大きな西郷隆盛の掛け軸が取り出され拡げられた。所狭しと眼前触れんばかりの距離にこれらの書が掛けられ、それらの書から発せられる気魂を四周に感じた。「書は人なり」とばかり、近代国家「日本」を造った志士、元勲達に囲まれている様な錯覚を覚えた。
 「不撓不屈」「時」の書は、東郷平八郎のもの。書した時の想いは如何なるものであったかと時の流れを遡り考えれば、防人の故地たる防大に相応しい遺墨と思われた。

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(3)図書館内の雰囲気
 防大が目指す知・徳・体のバランスが取れた全人教育を念頭におけば、学生舎、各校友会活動の道場やグランド等と並んで、古今の知識や知恵に触れ合う事の出来る図書館は、極めて重要な教育の場と言える。
 武田図書館長は「国家の安全保障という社会的責任を担うに相応しい人材を養成するため、単なる知識の蓄積だけではなく、知識を知恵に変える深い教養と豊かな人間性を養う必要があります。総合情報図書館は、良質な学術情報の提供を通じて、学生一人一人の自分磨きを応援します。」と総合情報図書館の紹介の辞に記している。
 館内の雰囲気は、その紹介の辞にある通り、防大教育の知の殿堂として落ち着いた雰囲気の中に、先人の英知に接し誘う場としての表情を有していた。
(4)母校訪問と図書館の利用
 現役時代の同窓生は自らの職責を果たすために多忙な日々を過ごし、勤務地も国内外の様々な地域に拡がる。このために、卒業以降、小原台を訪れる機会もなかなか見出し得ない。翻って、現役を引いたOBは、ひさしぶりに自ら歩んできた人生を俯瞰しつつ、母校を訪れてみようという想いも湧き出てくるのではなかろうか。
 OBの図書館利用規定を伺ってみると図書館カウンターで申請用紙に所要事項を記載し「図書利用カード」の発行を受ければ、館内閲覧は自由に出来(貸出は1週間の期間で2冊)、開館時間は平日(月曜日~金曜日)08:30~17:30との事。時間の自由度が大幅に広がる日々の一時、時には自分の原点を確認すべく小原台を訪れ、現役学生と共に、書籍を閲覧するのも一興ではなかろうか。全期別「卒業アルバム」や学生発行の校友会誌「小原台」を見るだけでも、十分に楽しみ、自ら過した小原台の時間を実感できる。

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(総合情報図書館の研修を終えて)
 快適な室温が保たれた総合情報図書館の研修を終えて屋外に出ると、再び猛暑の中、緑濃き小原台の学び舎が猛烈な太陽光に照り映えていた。
 1学年の遠泳訓練は佳境を迎え、海上要員の舟艇訓練もポンドで実施中と聞き、まさに盛夏「舟首に砕くる青き波、雲わきあがる海原に~!」の小原台の光景を肌で感じた。
図書館研修中、幕末維新の時、坂本龍馬をはじめとする若者達が海軍操練所で学んだ際の教程も所蔵されていると伺った。西欧列強との力の差を知り、まなじりを決して教練に励んだ草莽の若き志士達の想い。現代、そして将来の日本や世界の安全を担う防大生達の想い。時空を超えた「鉄腕鍛える若人の~」志が、炎天直上を指し示す時計台の元に収斂している様な感覚がよぎった。
 日本の防人として、先人の志と英知に触れ、自ら自分磨きをする小原台ならではの図書館、防大「総合情報図書館」に係る訪問・研修であった。(同窓会広報 杉山伸樹 記)