今人生、真っ盛り ~30期(海)〜
2024.12.16
「研究者としてのその後」
-テレビ出演、書籍出版、大学授業!?、先生と呼ばれる日々-
佐々木 孝博 (30期 海上)
2018年12月、防衛省・自衛隊を退官して、私は研究者として第2の人生を歩むことになりました。というのも、現役時代に、在ロシア日本国大使館防衛駐在官(駐ロシア防衛駐在官)として外交・安全保障の最前線で勤務させていただいた経験や、初代の統合幕僚監部サイバー企画調整官として防衛省のサイバー攻撃対処指針の制定・サイバー防衛隊の創設などに携わった勤務経験などから、現在は、ロシアの軍事・安全保障、情報戦、サイバーセキュリティ、インテリジェンス問題などを専門とした研究者として、その後の人生を歩んでいるからです。
退官後、研究者としての第1歩は、富士通システム統合研究所(現富士通ディフェンス&ナショナルセキュリティ)安全保障研究所というシンクタンクでの主席研究員から始まりました。大きな研究事業としては、脅威対象国としてのロシアの軍事・安全保障の現状がどうなっているのか、また、サイバー空間での安全保障はどのように進展していくのか、それらに対応するための我が国の安全保障はどうあるべきなのかというようなことを中心に研究活動を実施しておりました。
このような研究活動をやっているうちに、現役時代では思ってもみなかったことを、次々に経験することになりました。
その第1が、「書籍の出版」でした。現役時代から、論文作成という分野では、対外発表を細々とやっておりましたが、本を出版するなどということは考えてもみませんでした。そして、所属している研究所の所長を務められていた陸上自衛隊の元東部方面総監の渡部悦和さんからお話をいただき、「現代戦争論-超『超限戦』(ワニブックスPLUS新書)」という書籍を共著で執筆する話が持ち上がり、初出版に至りました。 この中で、ロシアの軍事・安全保障について(特にいわゆる「ハイブリッド戦」について)記述しました。
さらに、単著の話も持ち上がり、第2冊目の出版で単著としては初めての「近未来戦の核心サイバー戦-情報大国ロシアの全貌(育鵬社)」を上梓しました。
3冊目では、前述の渡部さん、さらには同じ陸自元富士学校長の井上武さんと3人で鼎談本「ロシア・ウクライナ戦争と日本の防衛(ワニブックスPLUS新書)」を出版しました。この本の関連では、東京駅近くの「八重洲ブックセンター」でサイン会も実施しました。サイン会というものはもちろん初めてでしたが、タレントのサイン会というものもこの拡大版なのかなとの印象でした。
その後も出版は積み重ねており、共著では「プーチンの『超限戦』(ワニブックス)」、「グローバルシフトと新たな戦争の領域(東海教育研究所)」、「ネット世論操作とデジタル影響工作(原書房)」を上梓しました。
今年(2024年)には、2冊目の単著「軍艦進化論-ペリー黒船艦隊からウクライナ戦争無人艦隊まで(扶桑社新書)」を出版し、世に本を出したのは合計で7冊となりました。現役時代では考えられないことでした。
退官後、出版という、考えてもみなかった体験をさせていただいた上に、さらに、驚くような体験をすることになりました。「テレビ出演」です。
最初にお話をいただいたのは、TBSテレビの昼の情報番組「ひるおび」でした。2022年2月24日にいわゆるロシア・ウクライナ戦争が勃発し、その半月後に、この戦争に前後して行われていた「情報戦」や「サイバー戦」について解説していただきたいとのオファーでした。本格的なテレビ出演は初めてでしたし(以前に自衛隊広島地方協力本部長時代に、砕氷艦「しらせ」が持ち帰った「南極の氷」についてのインタビューを受けたことはありましたが)、生放送も初めてでした。非常に緊張しましたが、何とかこれを乗り切りました。これをきっかけとしてBSフジからは2時間のニュース番組「プライム・ニュース」、ほぼ同時刻に実施されるBS-TBSの「報道1930」、BS日テレからは「深層News」、NHK総合「キャッチ、世界のトップニュース」などから矢継ぎ早に出演のオファーがありました。内容は、主として、ロシア・ウクライナ戦争についての解説です。何度か出演するうちに生放送にもだんだん慣れてきまして、最近では、オファーがあったときには、緊張よりも、ある種のやりがいも感じ始めた次第です。この原稿を書いております2024年の11月にもBS日テレの「深層News」から出演依頼があり、ロシアの核ドクトリンの改訂問題、我が国周辺海域におけるロシア原潜の行動などについて解説してきました。
退官後、もう1つ、やりがいのある仕事にも就くことができました。それは大学教員業務です。現在、アカデミアの世界では「広島大学法学部客員教授」「東海大学平和戦略国際研究所客員教授」「明治大学サイバーセキュリティ研究所客員研究員」「平成国際大学法学部非常勤講師」などの職を兼ねております。そのほかにも、関西学院大学、東京工業大学(現東京科学大学)などにおいても単発的な講話もやらせていただきました。今の若い学生や外国からの留学生と、国際問題、軍事・安全保障などについてディスカッションするのは非常に新鮮で、私自身の調査研究活動にも役立っております。
このように、現役を退いた後も、引き続き、軍事・安全保障分野において、現役時代同様に調査研究活動を継続できておりますことは、私にとっては生きがいそのものであります。まさに、今回のこの投稿の大テーマ「今人生、真っ盛り」と言えるかもしれません。
ただし、この研究者という職務、非常に恥ずかしいのは、書籍出版、大学教員などにおいては、一般に「先生」と呼ばれることです。全く恥ずかしいかぎりですが、この生きがいを感じられる業務において、今後とも、皆さまのお役に立てるように尽力していこうと思います。暖かい目でお見守りいただければと思います。
今まで数々情報発信してきた内容は、研究者データベースの「researchmap」というHPに掲載されていますので、ご参考にしていただければと思います。