今人生、真っ盛り 〜30期(陸)〜(2)
2024.12.16
「濡れ落ち葉亭主からの脱却:趣味の充実」
福田 洋司 (30期 陸上)
昭和に防衛大学校を卒業し、平成の時代は陸上自衛隊一筋で勤務、令和になり退職し、昨年ついに還暦を迎えました。現役自衛官の頃に比べると、年を重ねるにつれて自分の時間が増え、今後もその傾向が続くことでしょう。
ところで、「濡れ落ち葉亭主」という言葉をご存じでしょうか。これは、雨に濡れた落ち葉が靴にくっつくように、妻にぴったりと寄り添い、どこに行くにも一緒に行く夫を指します。定年後、会社生活が終わり、自宅にいる時間が増えた夫が、妻に依存しリビングに寝転がっている姿を表す言葉です。趣味もなく、友達も少なければ、自然と濡れ落ち葉亭主になってしまいそうです。
私もこれまで特に趣味はなく、人の趣味話を聞くことのみが楽しみでしたが、これからは趣味を持つことが、妻に嫌われずに生きるための鍵だと感じています。趣味があることによって、生活にハリが生まれ、日々の充実感が増すというのは、多くの人が感じていることでしょう。私も、定年前にこの実感を強く持つようになりました。
定年前に一眼レフカメラを購入し、写真を始めました。単身赴任先で風景を撮るうちに、この美しい風景を絵にできたらと思い、絵葉書や水彩画に挑戦しいい感じで仕上がりました。そして人物もいけるかもしれないと思い、「似顔絵色紙」を始めたところ、これに夢中になりました。趣味なので、作品が似ているかどうかは重要ではなく、自分が納得すればそれで十分です。
かつては、写真がない時代には肖像画が顔を伝える唯一の手段でしたが、写真が発明され、現代ではデジカメやスマートフォンの普及により、写真が主流となりました。SNSなどで写真が氾濫する時代だからこそ、絵による伝達には新たな価値があるのかもしれません。似顔絵といえば、山藤章二さんのようなデフォルメの強いものが一般的ですが、特徴を強調しすぎると本人が気にしている部分が目立ってしまい、嫌がられることもあります。私はむしろ、そこそこの似顔絵で笑顔溢れるものが良いのではないかと思いました。現役時代に「笑顔無敵」を掲げていたこともあり、これは私にぴったりです。
某元陸幕長の似顔絵色紙を作成し、知人に見せたところ「この人のこんな笑顔はありえない」と言われました。確かに、自衛官は制服姿で写真を撮ると、笑顔の人は少ないものです。「威厳を持たなければならない」「きりっとした表情でなければならない」といった意識があるのでしょう。しかし、宴会での写真を見ると、笑顔の酔っぱらいのおじさんばかりです。
似顔絵色紙を作成して思うのは、似ているかどうかは顔の形、髪型、そして目で決まるということです。「目は口ほどにものを言う」ということわざがあるように、目が最も本人を表しているのだと感じます。整形手術で目を施すことが多いのも納得です。ちなみに、口には感情が表れます。笑顔にしたければ口角を上げ、さらに目尻を下げると、より自然な笑顔に見えます。鼻はあまり重要ではありません。描けば描くほど誇張された表現になりがちなので、鼻は控えめに描き、少しすっきりとしたラインにすると、きりっとした顔立ちに見えます。女性の場合は、綺麗に描くと喜ばれます。少し盛ったり、不要なシワや線を消せば「よく似ている」と言われます。写真で肌や目を加工すると「偽造」ですが、絵の場合は「印象」にすぎません。
ちなみに、某女性国会議員の選挙ポスターが加工しすぎだと話題になったことがあります。ポスターと実物がまるで別人のようで、まるでその種のお店でのトラブルを連想させるものです。加工しすぎた顔写真を選挙ポスターに使うのは、詐欺ではないでしょうか。学歴詐欺や国籍詐欺が問題になる時代に、選挙ポスターの写真の加工がなぜ許されているのか、不思議でなりません。
最近、AI技術が急速に進化し、今では簡単に絵や似顔絵が生成できる時代になりました。将来、AIは多くの仕事を代替できるとも言われています。特にアーティストにとっては、この技術が脅威となり得るでしょうが、私はむしろ、AIをツールとして活用することを模索しています。 AIは有名な絵画やアニメ、漫画を元に学習し、未来的な絵を生み出しますが、一般人の顔を描く技術はまだ人間に及びません。AIに基本的な絵を生成させ、それに自分のオリジナリティを加えていけば、より面白い作品を生み出せるのではないでしょうか。
これからも新しい画材やツールが登場することでしょう。将来挑戦したいのは、起業を夢見つつ、簡素なイラスト似顔絵、集合写真の代わりとなる集合似顔絵、そして肖像画です。特に、社長室に飾ってありそうな肖像画にぜひ挑戦してみたいと思っています。もしかしたら、それが自分の遺影になるかもしれませんが(笑)。こうした目標を持つことが、今後の人生における大きな楽しみでもあります。