68期生に聞く ~空自一般幹部候補生~
2024.12.01
「航空自衛隊への第一歩」
航空自衛隊幹部候補生学校 学生隊
一般幹部候補生 空曹長 大久保 勇志
1 はじめに
防衛大学校(以下「防大」という。)68期航空要員卒業生を代表して本寄稿文を執筆する機会をいただけたことに感謝します。本稿を通じて、後輩達に今後の希望を与え、諸先輩方へ私たちの頑張りをお伝えすることができれば幸いです。
2 幹部候補生学校に入校して
今年の3月末、晴れて防大を卒業し、航空自衛隊の制服に袖を通しました。学生という身分から航空自衛官になったことを実感し、ワクワクしたことを鮮明に覚えています。幹部候補生学校(以下「幹候校」という。)に入校して様々な訓練や日々の生活を送る中で、入校前に抱いていた自衛官としての使命感や責任感よりも、更に高いレベルの使命感や責任感が必要であると実感しました。私たち第114期(防大及び一般)課程(以下「BU課程」という。)学生は、入校から約5ヶ月が経ち、導入期、練成期を終え、今後は完成期としてこれまで知識経験として培ったものを発揮し、能力の定着及び更なる伸展に繋げていこうとしているところです。防大の後輩たちは、幹候校にて具体的にどのようなことをするのかという点について一番気になるところだと思いますが、まずは、幹候校の教育理念である「自ら考え、判断し、行動する航空自衛隊幹部」について理解する必要があると思います。
幹候校においては、例えば当直業務など、人前で指揮を執る場面が多いです。ここでは部隊行動の指揮を執るだけではなく、朝礼等の計画立案まで任されます。学生の能力伸展に繋げるべく、適時性を持った計画を立案し、指揮官としての任務意識を持って取り組むことになりますが、防大出身者においてはその指揮官としての成果に如実に実力の差が出ています。つまり、防大時代にいかに考えて行動することができていたかが、大きくその結果の差として現れているということです。防大においては、週番や長期勤務学生といった役割を担うことはありますが、定められた期間、特定の者にその役割は限られてしまっている現状ではないでしょうか。幹候校ではそうはいかず、あらゆる瞬間に指揮官としての役割を意識し行動せざるを得ない状況になります。防大時代にいかに多くの失敗を含む経験を積んでおくかが本当に大事であり、それぞれが立つ立場において、「考えて」「判断して」「行動」することを防大在学中に癖づけておくことで、幹候校で良いスタートが切れると確信しています。
3 幹候校の魅力
幹候校での課程生活における魅力の一つに「交友関係」があります。私達はBU課程として防大出身者と一般大学出身者の混合の課程ですが、その他にも部内課程(通称I課程)や飛行幹部課程(通称A課程)、医科歯科看護科課程(通称MDN課程)といった、様々なバックグラウンドを持った課程の学生と集団生活をしています。共に生活する上で、私達は防大出身者のみのコミュニティに縛られず、他課程の学生との交流から多くの刺激を受けることができます。例えばI課程の学生は、年の近い学生から20歳近く歳が離れた学生も在籍していますが、豊富な部隊経験を活かして懇切丁寧かつ部隊の実情を踏まえたアドバイスをしてくれます。U学生は、私達防大出身者と比べて自身の体力や自衛隊経験の無さを自覚し、陰で努力している姿をよく見せてくれます。私達防大出身者はそのような姿を見て初心に帰り、多くのことを学ばせてもらっています。
このように、様々な経験と知識を持つ同期と、共に汗を流し、議論を交わす等の防大では絶対に味わうことのできない経験ができることも幹候校の魅力です。
4 活かされる防大時代の経験(後輩への言葉)
(1)健全な衝突
今、防大で学生舎生活や各種訓練に取り組んでいる後輩の皆には、同期とぶつかることを恐れずに、熱意を持って様々なことに挑戦してほしいと思います。なぜなら、ここ幹候校での生活においても、その経験が大いに役立つからです。先ほど防大在学中にいかに「考えて」「判断して」「行動する」ことが幹候校での生活に活かすことができるかを述べましたが、周りをどのように巻き込むか、そのアプローチを考えることが今後の生活での強みになるポイントです。
防大で得られる人間関係は、お互いに時には助け合い、競い合うことのできる腹の底から信頼し合えるものですが、その関係性は一朝一夕で得られるものではありません。防大の2学年は、1学年に対し直接指導を行い、4学年の方針を元に運営することになります。中隊の運営においては4学年の方針がどれだけ下級生に浸透しているかが非常に重要になり、直接指導する2学年は、同期間での協力が欠かせません。この際特に悩むことは、共に同じ立場で物事を考える同期との関係性だと思います。物事を本気で考える時こそ同期との衝突は避けられません。
防大とは違い、指揮するのは下級生ではなく同期という点から、当初はやりづらさを感じる場面が多々ありました。私自身、体育係として区隊員の体力向上を図り、みんながきつい、やりたくない、ということをやらせる立場にありましたが、その必要性について熱意を持って説き、同期のみんなを同じ方向に向かわせることができました。そのような場面で、防大4年間で経験した健全な衝突が活かされます。熱意を持って役割を全うし、同期に対して自分の考えを素直にぶつけることは理想ですが、普通なら関係性を壊したくないという保守的な考えになる者が出てくることもあります。だからこそ、今後も共に学び、同じ立場で日本の国防に従事する同期と本音ベースで語ることができるよう、防大在学時からぶつかることを恐れずに挑戦してほしいと思います。
(2)時間の有効活用
幹候校においては、時間の上手な使い方が求められます。課題や指導受け、試験勉強などを、課業外の限られた時間の中でこなしていくことは容易なことではありません。防大時代には自習時間が確立されており、また、授業の無い時間等も活用して体力練成などの自己研鑽に励むことができると思いますが、今のうちから計画性を持った行動をとることを心がけてください。その場その場での対応を習慣づけていると、幹候校での生活のギャップに対応できなくなります。時間が多くある中でも、いかに効率よくタスクをこなして自己研鑽の時間に充てることができるかを追求して生活することで、ここでの生活がより充実したものになるはずです。
5 最後に
防大在籍中は早く部隊に行きたいとばかり考えていましたが、ここ幹候校での学びは非常に貴重なものであり、新しい学びが多くあります。一部、防大での既習事項の復習になってしまうようなものに対して物足りなさを感じたこともありましたが、学ぶうちに自分の姿勢が試されていることに気づきました。自分が教官であればどのように行うかといった別視点で熟考できる機会にもなり、自己の意識ひとつで更なる成長につなげることができます。防大においては自分の時間を多く作ることができるはずなので、精一杯同期と楽しみ、高め合い、時間を大切に、有意義に活用してください。私も胸を張って立派な幹部自衛官となれるよう航空自衛隊の第一歩である、この課程生活に全力で励んでいきたいと思います。
(令和6年10月)