同窓生は今

第65期生に聞く ~空自一般幹部候補生~

2021.10.21

「幹部候補生学校の生活で得られたこと」

航空自衛隊幹部候補生学校F56.png

 第3中隊第1区隊 

  一般幹部候補生 空曹長 池田 真郷

 この度、防衛大学校第65期卒業生代表として、同窓会の機関紙に寄稿する機会を頂きました池田候補生と申します。拙い文章ではありますが、「幹部候補生学校の生活で得られたこと」について述べさせていただきます。  まず初めに、我々の学び舎である航空自衛隊幹部候補生学校(奈良基地)が、どのような環境にあるのかについて少し紹介したいと思います。幹部候補生学校は、東を宇和奈辺古墳、西を小奈辺古墳に囲まれ、さらに学校内にも古墳が点在するという特殊な立地です。また、奈良の大仏で有名な東大寺や、国宝五重塔を見ることができる興福寺なども程近くにあり、歴史豊かな古都奈良の中心部に位置しており、歴史を常に肌で感じられる環境です。

  さて今回はこの「小原台だより」に寄稿する機会を頂きましたので、幹部候補生学校に入校して5か月が過ぎようとしている今、この素晴らしい環境に恵まれた地で学び得たこと、感じ取ったことを5点述べさせていただきます。

 1点目は一期一会の精神です。幹部候補生学校には我々防大出身者と一般大出身者から構成されるBU課程だけでなく、空曹として勤務した後に入校するI課程や、航空学生出身者であるA課程、防衛医大出身者などのMDN課程、事務官として採用されたCE講習など、さまざまな課程が入校します。これらの課程の同期たちはお互いに異なる経験をしており、交流を図ることで新しい人間関係を築くことができるだけでなく、自分たちにない視点を得ることもできます。しかし、それぞれの課程は異なる時期に入校し、各々の課程を履修し、異なる時期に卒業するため、交流の期間、機会は決して多くはありません。そのため、貴重な機会を無駄にすることなく、有効的、かつ、積極的に交流することが重要となります。一方、防大はあまり人の入れ替わりがなかったため、私はこのような短期間で人間関係を築くことに慣れておらず、今までに入校し、卒業した他課程と十分交流できたとは言えません。そこで私は、人との別れは一瞬で訪れることを悟り、一回一回の人との交流の機会を大事にしていきたいと感じました。

 2点目は日本の歴史を肌で学ぶことです。冒頭で述べたように、奈良には神社や仏閣、古墳などをはじめ、教科書に掲載されているような歴史的な名所が数多く所在しています。この歴史的な名所を訪れ、五感でその場所を感じることで、気持ちが安らぐとともに、日本という国に対する自然な愛着が湧いてくると考えます。この愛着は日本人としての帰属心にも結び付き、事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に努める自衛官にとって大きな支えとなると感じます。

 3点目はオープンマインドの維持です。このことは区隊長たちから学んだことです。言葉にするのははばかられますが、私は幹部候補生学校に入校する前、区隊長という存在は、学生にとって恐怖の対象でしかないと考えていました。しかし、入校して区隊長との交流をもつようになると、区隊長は基本的にはオープンマインドであり、厳しいご指導をすることが常ではないということがわかり、ほっとしたことを覚えています。オープンマインドは、ナポレオンが「凶報ならばすぐに起こして伝えよ」と言ったと伝えられているように、任務遂行上影響が生じる悪い情報等の収集を容易にするため、自身の考えや方針といった自分自身をさらけ出す意味で用いられます。この考え方は、指揮官の意思決定において、階級に関係なく、あらゆる隊員が持つ多種多様なアイデアを吸い上げ、より適切な指揮を行うために重要であり、多種多様な任務を遂行する自衛隊にとっても重要であるといえます。そのため、私もナポレオンのような区隊長たちを見習い、厳しくも話しかけやすい幹部自衛官になりたいと考えます。

 4点目は日々の生活を楽しむことです。これは幹部候補生学校学生隊長の要望事項である、明朗快活から学んだことです。前向きな思考になればなるほど脳の働きが活性化し、後ろ向きな思考になればなるほど、脳の働きが鈍くなるということが心理学の実験で明らかになっています。つまり日々の生活を楽しむことは、重要な場面での正しい判断や、独創的な判断を可能にするということです。しかし、生活を楽しむためには、日々の楽しくないこと、例えば入室要領で指導される、駅伝競技会で多くの人に抜かされるといったことを減らす必要があります。そのため、私はこのような楽しくないことを減らすため、訓練や基本教練に全力で取り組むとともに、前向きな思考をするよう日々心掛けています。

 5点目は改善意欲をもつことです。今まで私は、幹部候補生学校で当直勤務の経験を約1か月に1回の頻度で経験しました。当直勤務では課業行進で指揮官として部隊を率いることや業間訓練(朝礼)を企画し実施することがあり、その際に区隊長から指導を頂くことがあります。当直は約3日で下番するため、この際指導された事項は、次の当直上番時に改善するということが多いです。この当直勤務を通じて、前回の反省を忘れずに改善することはもちろん、もし区隊長から指導を受けなかったとしても、もっと良くできる部分はないだろうか、もっと効率的な勤務はできないだろうかと常に考えることが、自身の成長に大きくつながることを学びました。

 終わりに、現在、課程履修期間は半分しか経過していませんが、私は今までの幹部候補生学校での生活で、上記の事項以外にも多くのことを学び、感じ取ることができました。これからの課程履修期間も多くのことを学ぶべく、積極進取の姿勢で取り組んでゆく所存です。

(2021.10.12)

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