第65期生に聞く ~陸自一般幹部候補生(2)~
2021.10.21
「後輩達へのメッセージ」
陸上自衛隊幹部候補生学校
第4候補生隊第5区隊
一般幹部候補生 陸曹長 横山 慶次郎
全国の諸先輩方及び同期生の諸官におかれましては、ご多忙の中、日々の任務にてご活躍のこととお慶び申し上げます。陸上自衛隊幹部候補生学校・第102期一般幹部候補生(防大、一般大等出身者)課程に入校中の防衛大学校本科65期卒業生、横山候補生です。
去る3月21日、青春時代を過ごした小原台の学び舎に別れを告げ、立派な幹部自衛官になるという目標を胸に久留米、陸上自衛隊幹部候補生学校の門をくぐってから早くも5か月が過ぎました。入校前には本当に自分は幹部候補生としてやっていけるのかと漠然とした不安を抱えていましたが、防大に加え一般大等出身の同期達と常に目前の課題克服・目標達成のために起床から消灯まで無駄のない時間を過ごす中で不安は払拭されて、心身ともに成長していることを実感しています。幹部候補生学校では実員指揮を重視した戦闘・戦技訓練に加え、戦術や戦史、防衛教養といった幹部として必要な識能教育、また一人の自衛官として自立するために必要な日常起居は勿論のこと、伝統ある高良山登山走、藤山武装障害走等の体育訓練を通して幹部自衛官として必要な資質を涵養することができます。
今回小原台だよりに寄稿する機会を頂きましたので、防大時代と比較して幹部候補生学校の生活で特に意識しなければならないと感じたことに焦点を当てて、後輩達に伝えたいことをこの場をお借りしまして述べさせていただきます。幹部候補生学校への入校を控える後輩達がその生活を想像する上での一助となればと思います。1点目は「自分の考えを持つこと」について、2点目は「計画的に目の前の課題に没頭する」について、3点目は「同期の絆」についてです。
1点目は「自分の考えを持つこと」についてです。防衛大学校に教務班長や訓練班長、長期勤務学生の役職があるのと同じく、幹部候補生学校には半週交代の3役勤務(小隊長、小隊陸曹、学習係)と係業務(同期生会、教務、体育、環境美化係等)といった役職があります。防衛大学校の役職の場合は勤務内容が細分化されているため、やるべきことが明確な場合が多いです。しかし、幹部候補生学校の場合は、区隊毎に多少の差はあると思いますが、多くが3役勤務と係業務の自主裁量に任せられており、指導部の方々から指導を受けつつ候補生主体で区隊を動かすことができます。むしろ、候補生が主体的にならなければ区隊が動かなくなります。ここで大事になるのが小隊長や係業務の長が区隊を掌握し、状況を判断した上で今何をさせなければならないのかという自分の考えを持ち、それを列員に明示することです。幹部候補生学校では区隊指導部に模範とすべき方々がいます。そういった方々が実際にどのような思考過程で物事を考えているか学びとる姿勢を持って、自身の企図を確立する上での精度を高めるよう努めてみてください。幹部候補生学校での生活を有意義にするということに収まらず、今後の自衛官生活において必ず役立つと私は考えています。
2点目は「計画的に目の前の課題に没頭する」についてです。防衛大学校の生活は上級生になれば時間に余裕が生まれ、そのあり余った時間で何かに集中して取り組めば自ずと何かしらの成果が得られる環境だと思います。しかし、幹部候補生学校の場合はやるべきことが多く、中々自分の時間を確保することができません。ただ一生懸命に目の前のことに取り組んでいたとしても、忙殺されてしまったり、忙しさに埋もれて目標を見失ったりして何の成果も得られないということが起きてしまいます。こういった現象を防ぐためにも、長期的な視点で計画的に目の前の課題に集中する必要があります。常に自分が持っている時間を何に傾注すべきか長期的な視点で優先順位を定め、決めたことに集中して取り組むことが大事です。こうすることで必要以上に休んだり、だらけてしまいたくなる自分を律することができます。
3点目は「同期の絆」についてです。同期がいかに大事な存在であるのかは、防大生の誰もが1学年時から身に染みて心得ているものだと思います。敢えてここで取り上げるほどの項目ではないという人もいるかもしれませんが、幹部候補生学校における「同期の絆」は明らかに防大時代の同期との関係性とは異なると考えています。幹部候補生学校では常に時間に追われ、毎日のように体力練成で身体を限界まで追い込むため、自分に余裕をもって生活できるような甘い環境ではありません。このような環境で生活していると自分のことばかりを優先する個人主義に陥ったり、同期に対して強く当たってしまうような場面がよくあります。しかし、真に同期の絆を育むためには、このように困難を共有しながら自分自身の本性をさらけ出して、お互いを理解するという過程は必要不可欠です。同期の弱みや強みを知っているからこそ、本当に過酷な局面で自分なりに同期を支えたり、逆に助けてもらうことができるものです。腹を割って本音で語り合い、時に励まし合い、時に厳しい言葉をかけるという過程を経てこそ真に背中を預けられるような同期との絆が形成されます。ここ幹部候補生学校はこのような濃密な人間関係を学ぶことができる環境でもあります。
上記3点を幹部候補生学校の入校を控える防大の後輩達へ伝えたいこととして述べさせていただきました。私の経験が少しでもお役に立てれば幸いです。しかしながら、私もまだまだ未熟者ですので、今一度、態度を見つめ直し、自分の目指す幹部自衛官像に少しでも近づけるように残りの期間も貪欲に成長できる機会を求めて精進して参ります。
(2021.10.12)