第64期生に聞く ~ 空自一般幹部候補生 ~
2020.12.03
「良き航空士官となるために」
航空自衛隊幹部候補生学校
第1中隊第1区隊
一般幹部候補生 空曹長 小川 隼人
全国の諸先輩方及び同期生の諸官におかれましては、日々の任務にご活躍のこととお慶び申し上げます。航空自衛隊幹部候補生学校第110期一般幹部候補生課程(防衛大学校の卒業者及び一般幹部候補生試験の合格者)(以下「BU課程」という。)に入校中の防衛大学校第64期卒業生を代表し、64期人間文化学科、弓道部、アカシア会OB、小川候補生がご挨拶申し上げます。
昨年度まで航空自衛隊幹部候補生学校(以下「空幹校」という。)では、一般大出身者と防大出身者を別々の課程で教育しておりました。しかし今年度より一般大出身者、防大出身者を同じ課程で教育する「BU課程」がスタートしました。このBU課程の動向に関しては、航空自衛隊全体から注目を頂いている状況であり、第1期BU課程として、日々身が引き締まる思いです。今回「小原台だより」に寄稿する機会を頂きましたので、「自ら考え、判断し、行動することの重要性」「私の考えるBU課程の意義」及び「防衛大学校の後輩に向けた助言」の3点を記します。
最初に、「自ら考え、判断し、行動することの重要性」について私の考えを述べます。空幹校では「自ら考え、判断し、行動する航空士官の育成」という教育理念に基づき教育が行われています。そのため当直業務、課業外での活動、競技会の運営等あらゆる活動について教官の指導を受けつつ、その多くが候補生の自主裁量に任せられています。つまり、自分自身で必要と思われる業務、努力を見出し、行動する必要があります。
現代の安全保障環境、科学技術等は目まぐるしく変化、進歩しており、「今日の常識が明日の非常識になる」時代は既に到来しています。こうした時代にあたり、日々の生活で「自ら考え、判断し、行動する」ことは極めて重要であり、空幹校の生活は非常に有意義であります。
時には、常に自分に厳しくあることを求められるこの環境に、辛さを感じることもあります。しかし「今日はもう頑張れない」と思う日でも隣で英語学習や体力練成に励む同期を見ていると、「自分もやらねば。」という意志が湧き上がってきます。 同期と切磋琢磨しつつ、この教育理念を胸に日々を過ごすことは、変化し続ける状況に対応するための基礎を獲得することに繋がります。同期と共に成長すべく、継続的な努力を行って参ります。
次に、「私の考えるBU課程の意義」について述べます。一般大出身者、防大大出身者を同課程で教育するBU課程は、将来我々が直面する統合運用、他国軍との活動を円滑に行うことに繋がる、と私は考えています。 BU課程での教育は、一般大出身者と防大出身者の絆を深めると共に、異なる価値観、文化に理解ある人材を育成する基盤となります。同期の絆を深めることも重要ですが、今後陸海空自衛隊が協力する統合運用を行い、世界各国と協力して活動を行うにあたっては、異なる価値観、文化に理解ある人材を育成することが喫緊の重要事項ではないでしょうか。
陸海空自衛隊の間でも運用思想や組織文化に差異がある中、他国軍との間にはより大きな差異があると予想されます。私は防大の人間文化学科にて、「文化相対主義」という概念を学びました。異なる文化であっても、それぞれ独自の価値体系を有する存在として、尊重して捉える態度のことです。「文化相対主義」は他文化を理解するにあたって絶対的に正しいわけではありませんが、他文化を尊重するこの考え方は、今後統合運用や他国軍との協力を行うにあたり、必ず役に立つと考えます。
BU課程の教育を通じて、異なる出自、経験を有する仲間と活動を行うことは、多様な価値観、文化に理解ある人材を育成し、将来の国防、世界の安定に大きく寄与すると考えます。
最後に、「防衛大学校の後輩に向けた助言」について述べます。防大、空幹校での経験を踏まえて、日々の生活に関する具体的な助言を2点挙げます。
1点目は、「時間の使い方を具体的に定めること」です。日々を効率的に過ごすことで時間は作れますが、作った時間の使い方について、具体的に定めている人は少ないのではないでしょうか。 これは、作った時間に勉強等をすることのみ勧めているのではありません。例えば「休息する」と決めて休む場合と、「なんとなく」休む場合では、その効果が全く異なります。矛盾に聞こえますが、意識して「一生懸命休むこと」でより効果的な休息を得られます。つまり、作った時間で「今週は英単語学習をする」「今日は休息し、他の課業に備える」等、取り組む内容を具体的に定めることで、作った時間の有効性が大きく向上します。
2点目は、各種規則を熟読する癖を身に着けることです。皆さんの机上には「学生必携」があると思いますが、まずはこれを隅々まで読んで下さい。その後、学生必携の根拠文書をも読むと一層理解が深まり、週番勤務、幕僚勤務等日々の生活に必ず役立ちます。 我々は憲法、自衛隊法をはじめとする根拠に基づいて行動しなければなりません。根拠を知ることで禁止事項を知り、自分や部下を守ると共に、許可事項を認識し、安心し、余裕ある気持ちで課業に臨むことができます。
幹部は部下に対し責任を持つ立場となり、根拠を「知らなかった」ために部下の人生に傷をつける可能性もあります。学生のうちから根拠をよく確認する癖をつけることは、幹部として勤務する上での必須事項と考えます。上記2点について振り返り、有意義な防大生活を送って頂ければ幸いです。
おわりに、64期一同は今後とも幹部候補生学校で日々全力を尽くし、良き幹部自衛官を目指して努力して参ります。関係各位の皆様には、今後ともご指導の程よろしくお願いいたします。