第63期生に聞く 〜 陸自一般幹部候補生(1) 〜
2019.12.07
「幹部候補生学校の生活について」
沖 惣一郎
現在、陸上自衛隊幹部候補生学校・第100期一般幹部候補生(防大、一般大学等出身者)課程に入校中の防衛大学校本科第63期卒業生、機能材料工学科、合気道部、沖惣一郎です。
私は、3月29日に期待と不安を感じながら幹部候補生学校(以下、OCSと言う。)に着校し、半年が経過しました。防衛大学校とは教育目的が異なるOCSでの修学は当然のことながら防衛大学校と異なる点が多くあります。顕著な例としてOCSでは上級生下級生という上下関係がありません。同期同士が国防という任務の中核をなす人材となるため、先頭に立つ自らの姿を思い描き、切磋琢磨し主体的に修学する日々を過ごしています。
OCSの教育目的は幹部としての資質の涵養及び初級幹部としての必要な基礎的知識・技能の修得です。つまり小部隊指揮官に最低限必要な事項を学びます。具体的には実員指揮に重きをおいた戦闘戦技訓練、戦術や戦史といった幹部に必要な識能教育、高良山登山走、藤山武装障害走等の体育訓練がそれにあたります。こうした教育訓練に励む中で防衛大学校の重要性・関連性に気づき、自らの苦い経験を後輩には味わって欲しくないと思い筆をとりました。伝えたいことは「同期の絆」、「主体的な行動」及び「理想の指揮官像」の3点です。3点についてOCSでの学び、防大時代にやっておけば良かったことについて話をします。
1点目は「同期の絆」です。自衛官は部隊活動により任務を達成します。従って横の人間は生死を共にする運命共同体です。とりわけ同期は上級生下級生という軋轢なく接することができる「最も優しく、最も厳しい」存在です。OCSでは総合訓練等の心身に大きな負荷をかける訓練が多くあります。これらに対し、区隊で目標を掲げ、厳しい練成を行う時、自身を支えてくれる存在が同期です。私は個人でできることの少なさと同期との連携・協力が任務達成のためには必要不可欠である事に気が付きました。衝突することもありますが、尊敬できる同期も多くおり、自分の至らなさや実力不足を感じ、自分を見つめなおせます。自らの視野を拡大させ、個性を磨く事にもなります。また、OCSでも同期が間違っていることがあります。その場合は同期でも教えなければなりません。それが区隊のため、同期のためになります。易きに流れるのではなく、正しいと思う行動をとってください。しかし、言い方によって伝わり方は異なります。ここで防大時代での対人関係力が活かせます。
校友会への取り組み方もこれに似ているでしょう。校友会の同期は防大生の最も長い時間を共有できる存在です。その同期に関心を持ってください。同期は自分が想像している以上に尊敬できる存在です。同期を試金石として、自分をしっかり磨いてください。OCSでは防衛大学校での同期に加え、一般大学や陸士出身の候補生と共に教育を受けます。これらの同期は、私たちが知らない経験を多くしており、視点も大きく異なり、興味深く、とても良い刺激を与えてくれます。
2点目は「主体的な行動」です。自ら学ばなくては何も得ることは出来ません。防大で出来なかったことがOCSで急にできることもないでしょう。防衛大学校を卒業してOCSに入校し、初めは戸惑うこともありましたが自助努力なしで出来るようになったことはありません。つまり積極進取の姿勢が大切と言えます。
OCSでは指揮の要訣を実践します。上手くいかない時もありますが、失敗は同期が補佐してくれますし、失敗してもその原因を考え、次に反映すれば、失敗は意味のあるものになっていきます。
これは防衛大学校における学科においても同様で、世の中は変化することから、学び続けなければなりません。そのための素地を防衛大学校で学んでいると考えてください。ややもすれば時間に追われ、受け身に陥りがちになります。そのような時こそ主体的に修学しなければなりません。
3点目は「理想の指揮官像」です。尊敬する人の有無が人生を大きく変えます。防大時代は様々な指導官・教官や同期、上下級生と出会いがあります。教育をただこなすだけでは指揮官に必要な資質が身につくわけではありません。なれるかどうかではなく、どんな指揮官になるべきかを具体的に考え行動し、試行錯誤しながら日々を過し行動した人とそうでない人では大きな差になるでしょう。
学生舎生活でも同じことが言えます。尊敬できる人は身近にいるため、参考にしながら、自分がどうあるべきなのか、早いうちから考えてみてください。
OCSや防大は幹部自衛官になるために必要な資質・識能を涵養・修得できる環境が整っています。活かすかどうかは自分次第です。防衛大学校で、今のうちから環境を利用し自ら考え行動する習慣を付けてください。
最後に防大時代、様々な事を教えて頂いた指導教官や学科教官等の皆様ありがとうございました。教えを胸に国防を担う人材となる事を誓い結びとします。
(2019. 9. 30)