同窓生は今

第62期生に聞く(その3)

2018.12.05

「芯のある幹部自衛官を目指して "仲間と共に"」62ki_ishibashi.jpg

海上自衛隊幹部候補生学校
第1学生隊第5区隊
一般幹部候補生 海曹長 石橋 英和

 立派な幹部自衛官になることを目標に、江田島の門をくぐってから半年が経った。つい先日まで、学校の中
庭にある「同期の桜」は枝いっぱいの淡い花を身にまとっていたのに、今はもう葉を枯らしており季節の流れ
を感じさせる。古鷹山登山、遠泳、遠漕競技など多くの行事がここまで行われてきたが、どれも内容が濃いも
のばかりで非常に充実したものであった。
 また、7月に発生した「西日本豪雨」では災害派遣の命を受け、国のため、人のために尽くすという自衛官
の任務の崇高さを身をもって感じることができた。これ程にも早い段階でこのような貴重な経験をさせていた
だけるとは思ってもいなかったので非常に驚いたが、思い返してみると今後の自衛官人生の基礎を形成しよう
としている我々にとっては、成長の糧となるまたとない機会であったと確信している。
 この他にも私は前期、防衛大学校卒と一般大学卒の約200名をまとめる学生長の職を拝命し、多くの学生
の指揮を執る機会をいただいた。入校当初は右も左も分からず、何をすることが正解なのかも分からず、模索
する日々が続いた。求められる能力は高く、気持ちが何度も折れそうになった。
 しかし、その度に防衛大学校の同期や幹部候補生学校で新たに出会った一般大学卒の同期たちが傍で私を支
えてくれ、数々の困難を乗り越えることができた。「同期」という言葉の重みをいつの間にか忘れてしまって
いた私に、改めてその重さを気づかせてくれた貴重な機会であった。併せて、些細なことであっても本当に困
っている人間にとって、自分の困難に気づいて声をかけてくれることがどれほど有難く、心温まるものである
かを学ぶことができた。これは自衛隊だけでなく、一般社会にも通ずるものでもあると思うので、誰に対して
も困っているようであれば積極的に声をかけ、細かな気の配れる人間になれるよう努力していきたい。
 防衛大学校在学時、私にとって一般大出身者は「ライバル」といった印象を強く持っていた。諸先輩方か
ら、一般大出身者の物事の飲み込みがとても早いことは聞いており、防衛大学校卒として絶対に負けてはなら
ない競争相手であると考えてしまっていた。今思えば、非常に情けなく狭い物の考え方であると猛省している
のだが、当時の私は目前に迫る新たな環境を不安視してばかりで、広い視野で物事を捉えることができなくな
っていたのだ。
 しかし、実際に生活を始めてみると、私のなかで一般大出身者は「単なるライバル」から「ライバルかつ、
先生」へと変わった。彼らの物事の見方は非常にユニークかつ合理的で、良くも悪くも凝り固まった私の頭に
大きな衝撃を与えてくれた。
 また、彼らはそれぞれが多様な人生経験を併せ持っており、防衛大学校では経験することができないような
ことを経験談として私に教えてくれる。この経験談を通じて、自分自身の人間としての視野が広くなっていく
ことが実感でき、スタディガイド(幹部候補生学校における教科書のこと)では学ぶことができないような内
容に数多く触れることができた。今でも一般大出身者にはとても感謝していると同時に、これからも多くの事
を教えてもらえれば、と思っている。今度は私が自身の持っている経験や、微々たるものではあるが術科など
の技術を少しでもいいので彼らに教えてあげられるように努めていかなければならないと考えている。
 ここ江田島で学ぶことができる期間は、残すところ半年を切った。ここまでやってこられたことに対する安
堵の気持ちがある一方で、これから待ち受ける遠洋練習航海に対する焦りの気持ちが入り混じっていることも
事実である。残された時間で、術科や教務等少しでも多くの事を吸収して「自分は全力を尽くした」と、胸を
張ってここを巣立てるように今後も日々の生活を全力で過ごしていきたい。また、同期と共にじっくりと過ご
すことができる時間も終わりが見えている。多くの同期と時間を共にし、深い思い出を沢山作りたいと思って
いる。
 最後に防衛大学校で学ぶ後輩諸官に一言。私達は一足先に遠洋航海、そして部隊へ行く。将来、皆さんと一
緒に働けることを楽しみにしていると同時に、自分達の後を追ってきてくれる存在がいることを大変心強く思
っている。皆さんに少しでも立派な姿を見せることができるよう、私達も精一杯努力していく所存である。江
田島での生活はきっと君たちが思っている以上に魅力的で、奥の深いものである。どうか食わず嫌いせず、ま
ずはこの環境へと飛び込んできて欲しい。「どんな幹部になりたいか」、「自分がこの組織で何がしたいか」
等、どんなことでもいい。大なり小なり目標を持って、江田島へ来てもらいたい。

 いつの日か、部隊で会えるその日まで、お互いに頑張ろう。

前の記事  次の記事