第62期生に聞く(その1)
2018.12.05
陸上自衛隊幹部候補生学校
第3候補生隊第4区隊
一般幹部候補生 陸曹長 松田 鉄平
現在、陸上自衛隊幹部候補生学校第99期一般幹部候補生(防大、一般大等出身者)課程に入校中の防衛大
学校第62期卒業生、松田候補生です。
私は、防衛大学校を卒業し、学業や体力面で多大な不安を抱えながら幹部候補生学校に入校しました。幹部
候補生学校での修学は、防衛大学校での生活とは異なる部分がいくつかありました。具体的な例として、修学
の内容は、戦術や通信技術等の、より実戦に近い内容を学び、訓練の内容も一隊員として動くのではなく分隊
長や、小隊長等、指揮官として行動することが多くなりました。これらを通じて幹部候補生学校での教育は、
将来の指揮官として必要な知識や技能を高めているという事を実感することが出来ます。
また、幹部候補生学校では、射撃検定や高良山登山走検定、藤山武装障害走検定など、数々の区隊対抗によ
る検定があり、各区隊は、これらの検定で優勝を勝ち取る為に、切磋琢磨して、日々練成に励んでいます。8
月上旬に行われた高良山登山走において、私は日々の練成では検定の合格基準に到達することはできなかった
のですが、本番当日、「絶対に目標を達成してやる」という強い意思と、周りの温かい声援によって、目標に
到達することができました。高良山登山走では、絶対に自分に屈しないという不撓不屈の精神を涵養できたと
感じました。
今回、「小原台だより」に寄稿させて頂くにあたり、私が幹部候補生学校で特に学ぶことができた2点を記します。
1点目は、"私達は一人ではない"ということです。辛く厳しい訓練や、日々の三役(小隊長、小隊陸曹、
学習係)勤務において、時には投げ出したり、逃げ出したくなる時もありました。しかしながら、如何なる状
況においても自分の周りには、励ましあいながら成長を共にする同期や、厳しくも私達の成長を期待して指導
してくださる付教官、助教、そして区隊長がいます。
実際、私も、野営訓練において小隊長勤務をした際、何をしても上手くいかず、投げ出してしまおうかと一
瞬考えたりもしました。しかしながら、同期からの適切なアドバイスや、指導部からの教育的指導により、困
難を乗り越え、野営訓練の小隊長を続けることができました。幹部候補生学校においては、先のことにどれだ
け不安を抱えていたとしても、必ずサポートしてくれる人が傍にいます。そのため、何事においてもまず、積
極性をもってやってみるということができます。
一方で、私も助けられてばかりではなく、今までに実施してきた徒歩行進訓練においては、いつも同期に荷
物を持ってもらっている立場でしたが、大野原訓練での30km徒歩行進訓練では、私が同期の荷物を持ち、
区隊全員が完歩することに貢献できました。同期一丸となり、助け・助けられ、日々成長していることを実感
できた場面でした。
2点目は、"簡単に物事を諦めない"ということです。例えば、普段の課業において、どうしても答えが出
てこないということがあるかもしれません。そのような時においても、自分自身でまず考えてみて、自分なり
の答えを出すことが重要です。また、先程も述べた私の高良山登山走における経験のように、練習等でいくら
基準に達することができなかったとしても、簡単に諦めるのではなく、最後の最後まで諦めずに物事を成し遂
げようとする精神が重要です。我々が将来幹部自衛官になった際、必ず達成しなければならない事項は、"任
務の完遂"です。私達自衛官は、困難な状況に陥っても、状況に応ずる最良の方策を決定し、あらゆる困難を
克服して任務を遂行しなければなりません。この「任務を完遂する」ということの重要性を、日常生活を通じ
て意識することで、将来幹部自衛官、指揮官になるに必要な責任感や規律心を涵養することができると考えま
す。
以上2点が、私が特に幹部候補生学校で学ぶことができた点です。最後に、来年以降、幹部候補生学校に入
校するであろう防衛大学校の皆様に、62期の一卒業生として、一言記させて頂きます。それは、"幹部候補
生学校は、確実に自分を精神的にも、肉体的にも強くしてくれる"ということです。特に4学年の皆様は、来
年に控えているであろう幹部候補生学校での生活に多大なる不安を抱えているかもしれません。
しかしながら、幹部候補生学校は、自分がどれだけ精神的に、肉体的に弱かったとしても、絶対に見捨てる
ことはありません。必ず自分達は成長することができます。けれども、これらの事は、自分から積極的に動か
なくては意味がありません。そのためには、あらゆる事に全力で臨む必要があります。皆様も、今後幹部自衛
官になるにあたり、常に積極性をもって物事に臨むことが非常に重要です。私の寄稿させて頂いた内容で、皆
様に何かひとつでも得るものがあれば幸いです。