新幹事に聞く
2018.02.02
防衛大学校 幹事
陸将 上尾 秀樹(29期・陸上)
全国の防衛大学校同窓会の皆様、こんにちは。私は、昨年8月に第49代幹事として着任致しました29期生の上尾(あがりお)です。自衛隊生活の原点ともいうべき防衛大学校に幹事として勤務できますことを大いなる喜びとし、その重責を全うし得るよう、全身全霊を尽くす所存です。今後とも、御指導・御鞭撻の程、宜しくお願い申し上げます。
さて、防衛大学校は、國分良成学校長をお迎えして、まもなく6年となります。学校長は、「全ては学生のために」をモットーに、「世界一の士官学校」を目指して「新たな高みプロジェクト」による、機構改革を含む各種の改革に取組んでおられます。このような改革の成果もあり、30年ぶりに見た防衛大学校は、様々な面で変化、否、進化の途上であるという印象です。そこで本稿では、防衛大学校の現状と今感じていることについて申し述べてみたいと思います。
○ 学生舎生活
学生舎における編成等も、当初の各学年混成8人部屋から、我々のような学年別4人部屋、2人部屋、等
々、変遷を経て、現在は各学年混成8人部屋となっています。
この間、様々な事案も発生し、学生間指導を禁止した時期もあったと聞いています。現在は、各種事案の
発生、コンプライアンスに係る意識の変化等を踏まえ、平成27年1月から、「学生間指導のあり方」を明
示して、今の時代に適合した「部隊の隊員指導としても通用する、被指導者を粘り強く教え導く。」要領を
徹底し、「厳しさの中にも、絆が育まれるような温かみのある」学生舎生活を送れるよう指導しています。
現在の4学年は、1学年の途中からこの指導を受けており、そのこともあってか、今年度に入ってから
は、不適切な指導による懲戒事案も減少傾向にあります。一方で、学生の躾・マナー等、建学時から重視さ
れている事項が、十分に学生に根付いていないのではないかと危惧しています。訓練部も同じ問題意識を持
ち、指導教官に対する指導をはじめとする各種施策を実施し、「武人にして真の紳士」たるべく、一意その
徹底に努めているところです。
○ 校友会活動
学生の3本柱の一つである校友会活動ですが、我々の頃に比べると練習等に充当できる時間が限られ、9
時限目を含む1630~1830までの最大2時間となっています。このように時間的な制約はあるもの
の、学生諸君は、各種の工夫をしつつ、熱心に活動に取り組んでいます。
学生時代に所属していたラグビー部を例に取りますと、1試合で必要な走力等のスタミナ・スピード及び
コンタクトプレーで必要とする筋力を詳細に把握し、これに応じたトレーニングを科学的に実施していま
す。筋力トレーニングも闇雲に実施するのではなく、シーズン中においても2日に1回とし、定期的な筋力
測定のデータに基づき実施するという徹底振りです。さらには、筋力を効果的に向上させるとともに、疲労
を回復させるため、必要な栄養を摂取できるよう練習の前後等にプロテインやバナナ・おにぎり・オレンジジ
ュース等を補食しています。当然、優秀な指導者がいるからこその科学的トレーニングですが、様々な工夫
により時間の制約を克服しつつ、チーム力強化に主体的に取り組むことは、学生諸君にとって、今後の大き
な財産になるものと思います。
○ 教育・訓練・研究体制
30年ぶりの防衛大学校は、施設の面で見違える状態でした。学生時代の施設で残っているのは、理工学
館、防衛学館、総合体育館及び学生会館くらいで、多くは新しい施設に替わっています。
現在も、新理工学館A棟の建替整備を実施中で、平成40年頃を目途に5棟の現理工学館と防衛学館を4
棟の新理工学館に順次建替整備する計画となっています。また、学生教育1号棟~3号棟(旧6号舎~8号
舎)の耐震改修、内装・外壁改修にも着手しており、教育・訓練に関する環境整備を計画的に進めています。
一方で、学生舎における修学環境は、決して満足のいくものではないと感じています。特に、机等の備品
や被服については、世界一の士官学校を目指し、真の紳士・淑女を標榜するに相応しいものとなるよう、計
画的な更新が必要だと認識しています。また、回廊状という学生舎の特性から風通しが悪く、エアコンの使
用時間も限定されるため、夏季における修学環境は劣悪ですが、こういった点も、今後の検討課題であると
認識しています。
○ 国際化
これからの幹部自衛官に必要な国際性を身につけさせるとともに、防衛交流の一環として留学生の派遣及
び受入を積極的に行っています。本科への留学生は、タイ王国及びシンガポールの他、インドネシア、ベト
ナム、モンゴル、韓国、カンボジア、フィリピン、東ティモール、ラオス、ミャンマーの計11ヶ国を毎年
受け入れています。また、外国士官候補生の研修として、約4ヶ月の長期コースに米国、フランス、オース
トラリアを、約1週間の短期コースに米国、ロシア、インド、オーストラリア、韓国、タイ、シンガポー
ル、カナダ、ブラジルを受け入れています。
一方、防衛大学校からの約4ヶ月から1年の長期派遣では、米国、フランス、韓国、ドイツ、オーストラ
リア、カタールの6ヶ国に20名を、短期の約1週間から3週間の派遣では、米国、タイ、インド、カナ
ダ、シンガポール、ブラジル、ロシア、中国の8ヶ国に38名を派遣しています。
我々の頃とは異なり研修等の機会も派遣人員も増えていますが、より一層の充実を図るため、米国への派
遣期間の長期化についても検討を進めることとしています。
また、全学生に実施しているTOEICですが、ほぼ右肩上がりで成績は向上しています。全学生の平均
は、23年度が432点、26年が462点、29年が483点となっています。在校している4学年から
2学年は、学年が上がるごとに平均点が向上しており、今後の伸展が楽しみです。
以上、防衛大学校の現状と簡単な所見を申し述べましたが、「鍛えれば鍛えるだけ、それに応えてくれ
る。」学生達だけに、これからも着実に成長できるよう指導して参りたいと思っています。
同窓会の皆様、今後とも、御指導の程、よろしくお願いいたします。