今人生、男盛り(23期ーその2)
2018.01.19
陸23期 末村 友幸
平成24年8月に定年を迎え、地域活動に専念しています。定年を迎えて思ったことは、防衛任務と転勤からの解放、そして今後どうやって生きていくかという事でした。
自衛隊では北海道と関東で勤務しましたが、基本は駐屯地・基地で同じ自衛隊員とともに集団で活動しながら官舎で生活をし、数年間勤務すると新たな任地に転勤して新たな任務と生活が始まるというものでした。魚
に例えるとまぐろやぶりのような回遊魚的生活で同一の種の群れが日本の南から北まで大海原を回遊するようなもので、群れからはぐれないように一生懸命泳いでいた感じです。
定年すると任務と転勤がなくなり、地域で生活することになりました。回遊魚的生活から、海の底の竜宮城のような生活にその態様が一変しました。そこには鯛やヒラメなどの魚の他にカニやタコ、エビやヒトデ等多
くの種類の生物が共生する複雑な世界でした。私は縁があって北海道の千歳市に終の棲家を構えましたので、ここで一生を終える多くの先輩自衛官と同じようにこの地で生きていくことにしました。
千歳市は自衛隊の駐屯地・基地が3つもあり、自衛隊OBや自衛隊に係わりある人が多く、良くも悪くもちょっと変わった特色を持っています。新住民として地域に受け入れてもらうために、まずは身近なコミュニティーである町内会や自衛隊OBで組織する隊友会への入会から始めました。
1 町内会活動
北海道の良いところは、地域の住人の皆さんは元々他所からの転入者で、特に千歳は元自衛官やその関係
者が多く、よそ者を受け入れてくれる文化があるところです。しかし、そうは言っても新参者ですから地域
コミュニティーに溶け込むには下働きから始めるのが鉄則だと思い、町内会の役員を勧められるまま引き受
けました。町内会は地域コミュニティーの核となる団体ですが、法的根拠がない自発的団体で、役員はボラ
ンティアです。
最初は監査委員でしたが、半年もすると自衛隊でいえば作戦幕僚にあたる総務部長という重役を引き受け
ることになりました。町内会は地域住民の親睦と行政の下請けのような機能を併せ持つ団体です。古くから
の役員に教えを乞いながら町内の親睦活動の企画や町内広報紙の作成等の活動を行って、希薄化する住民関
係を何とか維持存続させることに苦心する毎日です。また行政サービスの下請け的ではありますが、回覧物
の配布、共同募金の集金、除雪や草刈り、資源ごみの回収等の福祉や住環境の整備を行っています。ボラン
ティア活動のコツは「決して怒らないこと。ケンカをしたら会員が辞めて会がなくなる。」という事を学び
ました。
なお、高齢化社会を見据えて60歳から入会可能なもう一つの地域コミュニティーである老人会にも今年
から入会しました。最近、老人会は高齢化と入会者の減少が進んでおり、介護事業所と変わらないような感
じの集まりになっています。私はもちろん最年少会員で、力仕事やカラオケの機械操作等を期待されていま
すが、高齢化社会ではもっと重要な役割を期待しても良い団体だと思っています。
2 隊友会活動
退職後、仕事については地域の自衛隊や自衛隊員を相手にする事業をやりたいと漠然と考えていたので、
とりあえず自衛隊OBのコミュニティーである隊友会の千歳支部に入会しました。ここでも"役員の高齢
化"と"なり手不足"が深刻で、会を手伝わせて下さいと申し出ると、すぐに受け入れてくれました。
半年間は事務所の留守番や電話当番などの下働きからはじめ、やがて事務局長をさせていただきました。
千歳支部は、全国最大の2,000名の会員数を誇る支部なので、事務局長の仕事は、会員の管理、会費
の徴収、部隊や関係団体との調整、イベントの企画など事務量も多く、ボランティアですが毎日事務所に
"出勤"しました。活動を通じて多くのOBとの出会いがあり、将来の隊友会について相談もしました
が、当初考えていた自衛隊相手の事業については、相棒が見つからずに未だ実行できていません。隊友会
活動の活性化と合わせて自衛隊のOBが集まって千歳ならではの事業が出来ないかなあと今でも探りを入
れています。
また、隊友会活動を通じて出会った先輩から勧められて、「日本の伝統と文化を守る会」に入会し、今
では事務局長を引き受けさせていただいております。出会いは多い方がいいので、自衛隊OBだけではな
い人との出会いも大切にしています。
3 市議会議員活動
定年後、働く妻の扶養に入りながらボランティア活動をやっていましたが、27年4月に千歳市議会議
員の補欠選挙が行われることになりました。OB議員を応援して防衛基盤の充実を図ることが自分の役目
だと任務分析をしていたので、自らが立候補することは考えていませんでしたが、OBで立候補する人が
いないということで、「自衛隊OB候補として私が出ましょう。」と誰にも相談せずに立候補を決め、準
備もそこそこ、見よう見まねで選挙活動をやって結果は最下位でしたが何とか当選しました。全く無謀で
した。
議員になるには公職選挙法に基づく選挙を経なければなりません。27年の補欠選挙と今年5月の本選
挙を合わせて2回の選挙をやりましたが、これは今まで経験したことのない全くの別世界でした。選挙戦
というくらいですから鍛えた戦術を駆使して戦えば良いのですが、重要なのは、見ず知らずの人に臆面も
なく投票を依頼することに本人と家族が耐えられるかどうかです。また、会う人が全て"票"に見えてく
る感覚も異常なものです。
家族を巻き込んでの選挙戦で、妻にも街頭で一緒に頭を下げてもらったり、選挙カーに乗ってウグイス
嬢もやってもらいました。本当に特別な世界です。
議会には市民生活に係わるすべての議案を審議して決定するという重要な役目があります。議会は当選
回数で役職を配分する慣例があり、2回当選でやっと役職が回ってきました。ただ、国会議員と違い秘書
がいないので、議案の読み込みや議会、行事参加のスケジュール調整から質問のための調査研究の手続き
や質問原稿の作成まで全て自分でやります。自衛隊の学生の論文発表のようなものですが、年4回議会が
開催されますので毎日が調査研究の日々です。現在の主要なテーマは"高齢化社会における地域コミュニ
ティーの在り方"でボランティア活動を通じて研究を深めています。
4 超高齢化社会という"国難"と戦う
町内会や隊友会でも市議会議員としての活動でも最も感じるのが、高齢化の進展です。安倍総理は北朝
鮮の核・ミサイルと並んで少子高齢化を"国難"と位置付けています。高齢化は、医療・介護費の増大等
将来の日本に悪影響があると心配されていますが、自分自身もいずれその"国難"の対象になるわけです
から、何とかこれを克服しなければなりません。自衛隊のまちで任務を終えた自衛隊OBが豊かに暮らせる
まち、北の竜宮城を目指して地域活動に頑張ってまいります。