第60期生に聞く(その1)
2017.01.06
第3候補生隊第3区隊
幹部候補生陸曹長 岡田 健
現在、陸上自衛隊幹部候補生学校・第97期一般幹部候補生BU過程に入校中の防衛大学校本科第60期卒業生、岡田候補生です。
防衛大学校を卒業し、幹部候補生学校に入校し、早くもその大半が過ぎ去り、卒業まで残すところわずかとなりました。幹部候補生学校では、約10ヶ月という短い間に、日常起居をはじめとして、小隊長としての実員指揮能力に重点を置いた戦闘・戦技訓練、戦術や戦史といった幹部として必要な識能教育、そして、自分を見つめ、同期と高めあうことができる高良山登山走、藤山武装障害走等の体育訓練を行い、その中で幹部として必要とされる資質を涵養すべく日々忙しくも充実した日々を過ごしています。
今回、「小原台だより」に寄稿するにあたり、以下の2点を記します。1点目は「目の前の事に全力を尽くす」という点、2点目は「同期を愛す」という点です。
私は、日々の生活を過ごす上で「目の前の事に全力を尽くす」事を目標に生活しています。防大を卒業したての頃の私は、幹部としての理想像をすぐに持つことはできず、目標とすべきものが見つからなかったため、とにかく与えられた事に全力でぶつかろうとしたのがきっかけでした。そうすることで、上記に述べたような訓練1つ1つに全力で取り組むことができました。「全力を尽くす姿勢」は同期に伝播します。この、同期に伝播させることのできた「熱」を生み出し伝播させることこそ、私の目標とすべき小隊長像でありました。自らが率先垂範して背中で見せることによって、それを見た周りの人間を感化し、部隊を強くする。はじめはぼんやりしたものであった理想の小隊長像を、目の前の事に全力を尽くす事で、確かなものにすることができました。
幹候校の生活は、厳しく辛く、くじけそうになる時があります。そんな時に助けてくれ、励ましの言葉をくれるのは同期です。1人では成し遂げられないようなことも、同期と共に支えあって協力することで乗り越えていくことができます。同期と支えあっていく中で、偏りができてくることがあると思います。気が合う同期と気が合わない同期等様々いると思います。しかし、私は全ての同期を愛さなければいけないと考えます。最も身近な同期を愛せない人間が、国を愛して守ることはできないと考えるからです。まずは、同期を愛することからはじめ、それを拡げることによって、国を守るための愛国心や使命感といった資質につなげていかなければなりません。ここ幹候校では、その資質を涵養する環境が整っています。厳しい環境の中で、自分を犠牲にしてでも同期のために頑張ることで、その絆はより強くすることができます。また、この絆は、将来、幹部となった時に自分自身を助けてくれるはずです。
最後に、防衛大学校在学中の後輩に向けて卒業生として一言記したいと思います。それは、「損得で動く人間になるな」ということです。自分のためになるか、ならないかの判断基準で動いていては、常に全力でいることはできないし、同期のために自分を犠牲にすることなど、絶対にできません。ある物事に取り組むとき、自分が損得勘定だけで動いていないかを常に問いながら生活することが、幹部にとって必要な資質を身につけるための大切なフィルターになると考えます。これから苦しい場面に遭遇して、楽な方向に流れたくなることがあると思います。しかし、楽な方向に流れることによって、周りにどのような影響を与えるのか、同期にどのように見られるのか、といった善悪のフィルターを通すことにより、幹部になる者としての誇りをもって、これから待ち受ける困難に立ち向かっていってください。
【訓練風景】