ワクチンの話題
2021.03.14
古賀義亮
新型コロナ・ウイルスの蔓延の下に令和2年は厳しい社会生活をすごした。
ようやく諸外国ではワクチンが開発されて、日本でも医療従事者からワクチンの接種が始まっている。その内に高齢化となっている我々の世代にもワクチンの接種が行われるであろう。
そこでワクチンにかかわる話題を述べよう。
テレビのある番組で、インターネットのSNSではワクチンは副作用があるとか、製薬会社が儲かるための方策などの流言のためにワクチン接種を控えていたが、専門家によるワクチン効果の検証結果から有効であることを知ってワクチンの接種を受けることになったという女性を追跡したドキュメント放送があった。
ワクチンとは天然痘とか痘瘡と呼ばれていた伝染病の予防のために人体が本質的に保有している免疫能力を高める手段をエドワード・ジェンナーが開発したのが最初である。
エジプトに旅行した友人は、水により腹下しをするといわれていたので一切水は飲まなかったにもかかわらず、生の果物により腹下しを起こし、直ちに病院に駆け込んだそうである。水で洗った果物だったらしい。
私がエジプトを観光旅行で訪れたとき、日本語に精通した現地のガイドは日本に留学していたので日本語に堪能な理由であるという。そのガイドに友人の腹下しの話をしたところ、本人の留学が終わってエジプトに戻ったときに、激甚な腹下しをしたという。日本滞在でエジプトに常駐する細菌の耐性となっていた免疫能力が失われた結果であろうと語った。
日本の自然原野、とりわけその土壌には多数の微生物が存在する。
大村 智氏は日本のある場所に存在していた微生物から難病の薬品となる成分を抽出した功績で2015年にノーベル賞を授与された。翌年に「微生物が人類を救う」との講演を行ったが、まさに真理を諭す格言の表題である。この逆説を唱えるとすれば「微生物に背く人類は滅びる」といえる。ワクチンは悪しき微生物の耐性として免疫性をヒトに授ける。
コンクリート・ジャングルとなっている都市にはワクチン効果をもたらす土壌から隔離されているから、都市住民とその子孫は悪しき微生物の耐性を失うと私は懸念している。土壌に親しむ農作業を孫子達に私は勤めて薦めている。すでに一昨年になるがサツマイモの苗を植えつけさせ、その収穫も台風が近づく前に行った。売り物にはならないような格好の悪いサツマイモは自然から多く届けられた。恐らく農作業に携わった孫子たちは、同時に何等かの耐性を微生物から授かっているとひそかに喜んでいる。いまのところ新型コロナ・ウイルスに罹患していないというので、その効果があったかもしれない。
ワクチン効果は、人間社会にも存在する。
いま発達障害のことが話題になっているが、発達障害は育成の段階でワクチン効果が充分作用しなかったために生じるケースもあるのではないか。
単なる一例かも知れないが、両親から大事に育てられて、経済的にも何も苦労することなく過ごすことで引きこもりになり、何も仕事をしないという状態は餓えを知ることのない状態から、飢餓にかかわる免疫性が消失した結果と見なすことができる。
防衛大学校では4年間にわたり休暇中を除いて、昼夜を分かたず上級生、同期生、さらには下級生の中で生活し、学問の修得、並びに健康増進、相互間の連携を深めるためにスポーツとか訓練に励む。そのような空間には様々な人間関係の軋轢もあるが、それはワクチン効果をもたらしている。そのワクチン効果の例とは、いやな思いをした場合、そのいやな思いを他人にはしてはならないという教訓を養うことができる。防衛大学校の学生生活を送ることは、枠の中に閉じこめられると表現する場合と人間関係が丸くなると表現する場合がある。いずれの場合についてもワクチン効果が学生生活の中で養われたと解釈できる。
初代学校長の槇 智雄先生は、イギリスの大学での共同寮生活の美徳はワクチン効果をもたらす人間関係社会の共同体に必要な教育態勢であると指南していたことに、いまになって理解できる。その理解は遅きに失する私のワクチン効果である。
しかしながら、新型コロナ・ウイルスの耐性をもたらすワクチンの接種の機会があれば、人生の黄昏にさしかかっていても受けたい。この想いは諸大兄とも共有したい。