一宿一飯の恩義
2020.01.30
古賀義亮
感激を受けたメイルが届いた。
そのメイルは本人のものではない。
少しばかり背景を述べる。
在職中、様々な学会で活躍しているある一流会社の会社員と交流があり、その研究業績に敬意を持っていたことから、短期間の非常勤講師として研究科の授業を依頼したことがある。その授業を受講した学生、一宿一飯のお世話を受けたとしよう。
学生数は10人に満たない程度であったと記憶している。その中のある学生は防衛大の修士課程に相当する研究科を卒業し、在学中の研究成果をもとに他大学の博士論文としてまとめあげて、博士を授与されている。防衛大には博士課程が存在しなかった時代であった。
やがて元学生は防衛省で高官となり、最近定年退職した。
定年退職した後、短期間の非常勤講師として勤務し、すでに定年となっている会社員と同じ会社に元学生は就職した。そこで彼は一宿一飯のお世話を受けた会社員のメイル・アドレスをたどり、一宿一飯に相当する講義が現役時代の業務に役立ったという御礼をとどけていたのである。
私の手元に届いたメイルは、元学生からではなく、未だに交流がある元会社員からであった。感激をうけたその理由は、一宿一飯の恩義を忘れないという精神をはぐくんでいた防衛大学校の教育過程とその教義である。