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お知らせ

疑いを持ち考える

2019.08.12

古賀 義亮

 ノーベル賞を授賞した江崎玲於奈氏は著書「限界への挑戦-私の履歴書」で、哲学・科学などでの貢献は「疑いを持ち」、その解決のために「考える」ことから発展していると述べている。その代表格として、デカルト(1596-1650)の「すべてが虚偽であると疑っても、究極的にそのことを考えている存在を否定できない」を引用している。江崎氏は、防衛大で講演を行い「疑考」は科学発展に寄与する心であると、全学生を前にして諭した。

 私は防衛大に赴任してから、修士課程に相当する研究科学生には「疑考信確」を座右の銘としてはどうかと述べていたので、琴線に触れた想いがした。

「疑考」は、4行漢詩の絶句の構成に関わる「起承転結」の「起承」に相当する。

「転結」は存在しない。

「信確」の「信」は「疑」に対応する「転」と見なすことができる。さらに「確」は確定できる結論であるから「結」である。

 私は科学論文の著作にあたっては「疑考信確」の構成が必要であり、疑いを持つことが科学の発展に寄与する「起」であると信じて確心している。私の研究室にこの「疑考信確」を掲示していたことがある。

 先日、高校時代の同級生で現在は現代書家二十人に数えられている高名な江口大象氏と食事をしながら懇談した際に、私の座右銘を聞かれて、このことをお話ししたところ、この座右銘を書にして届けてくれた。届いた色紙を早速茶掛けに入れて床の間に掛けた。さすがに大象による書であり、狭いながらの日本間が高貴に映るようになった。この書は家宝にするつもりでいる。

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